社労士業務の未経験者向け~独立開業・障害年金請求実務②・請求編~

この記事は、社労士業務の未経験者向けに、障害年金請求業務の実務イメージを掴んでもらうために書いています。

今回は、障害年金請求実務②・請求編です。私の体験をベースに、シンプルな請求事案を書いていますので、参考にしていただけたらうれしいです。

第3章 障害年金請求の準備

依頼者との面談を終え、早速障害年金請求手続きの準備を進める。

①年金事務所での納付要件予約

まず、障害年金請求には年金保険料の納付要件があるため、念のため、依頼者の年金記録を年金事務所で確認。現在年金事務所での相談は「予約制」となっているので、事前に予約をとってから行きましょう。(予約窓口または最寄りの年金事務所の職員さんで予約をとります)

私「お世話になっております。社労士ケビンです。年金相談の予約とりたいのですが」

年金事務所職員(以下「職員」)「いつもありがとうございます。請求内容は何でしょうか?」

私「障害年金です。精神の。委任状もって納付要件を確認したいです」

職員「障害年金ですね。納付要件の確認だけなら、30分の枠でよさそうですね。希望日時ありますか?」

私「〇日か〇日の午前中空いてますか?」

職員「すみません、今週は予約一杯になってます。来週の〇日や〇日ならいまのこところ予約できますがいかがでしょうか?」

私「わかりました。では〇日の午前〇時~の枠でお願いします」

職員「わかりました。その日時で予約お取りしました。事前に本人確認が必要なので、対象者の方の基礎年金番号、お名前、生年月日を教えてください。あと、初診日もお願いします」

上記のような流れで予約を完了させ、あらかじめ納付要件を確認します。納付要件が満たせない場合そもそも請求ができませんので、念のために確認しておくと確実です。

なお、依頼者の方の中には、一度ご自身で年金事務所へ行き、納付要件等を調べている方もいます。その場合、年金事務所の窓口で納付記録などをもらっている場合がありますので、この納付要件確認は省略してもよい気がします。

②「受診状況等証明書」の作成依頼

障害年金の場合、現在受診している病院と初診の病院が違う場合、「初診日」を証明するために「受診状況等証明書」を初診の病院(C医療機関)で作成してもらいます。A4サイズの書類で、年金事務所窓口かまたは年金機構のホームページからダウンロード可能です。

依頼者の方がご自身で動ける場合には、ご本人へ書類を渡し受診状況等証明書をとってもらうこともあります。

本人が動くことが難しい場合または希望がある場合は、私がかわりに動きます。

私 C医療機関へ電話する

C医療機関(以下Cとする) 「はい、Cメンタルクリニックです」

私「突然の電話ですみません。私は〇〇市の社会保険労務士ケビンと申します。

実は、以前Cメンタルクリニックに通院されていた〇〇さんの件でご連絡差し上げました」

C「社労士のケビンさんですね、昨日〇〇(依頼者)さんのご家族の方から電話を頂き障害年金について社労士ケビンさんから電話が行く旨聞いてます」

※あらかじめご家族からCへ事前連絡をいれておくとスムーズですね

私「そうですか、それはよかったです。ご家族の方からお話があったと思いますが、現在、〇〇さんの障害年金請求の準備をしており、Cメンタルクリニックさんから「受診状況等証明書」を作っていただきたいと思いまして・・・」

C「わかりました。カルテはまだあり、医師に確認したところ作成可能と聞いてます」

私「それは大変助かります。受診状況等証明書の書類を私からそちらへ郵送いたしましょうか?」

C「そうですね、書類を送っていただければこちらで作成いたしますので、お願いします」

私「わかりました。早急に書類を送付しますので、どうぞよろしくお願いいたします。出来上がりましたら、私へご連絡いただけますか?あと、かわりに私が受け取りに行ってもよいですか?」

C「出来上がったらこちらからご連絡いたします。受け取りは可能ですが、その際、障害年金手続きの依頼を受けていることがわかるもの、たとえば委任状などのコピーをお持ちいただけれb大丈夫です。あと、作成費用として〇〇円かかりますので、窓口でお支払いいただきたいです。連絡先の電話番号をお聞きしてもよろしいですか?」

私「わかりました、委任状のコピーと書類作成代〇〇円をもって伺います。連絡先は〇〇〇です。どうぞよろしくお願いいたします。」

③「診断書(精神障害用)」の作成依頼

現在通院している病院(D医療機関)において、障害年金請求用の診断書(精神障害用)を作成してもらいます。

今回は、①初診日から1年6か月経過時点(障害認定日)の障害状態で障害年金がもらえるかどうかの判断をしてもらう「認定日請求」と、②仮に認定日請求が×だった時に備え、今現在の障害の状態で障害年金がもらえるかどうかの判断をしてもらう「事後重症請求」を行うので、それぞれの診断書を作成してもらいます(診断書2枚)。

障害年金請求では、どの障害を根拠に請求を行うかによって診断書の種類が違うので注意が必要です。今回のようなうつ病の場合は、精神障害用の診断書となります。

また、どの時点の診断書が必要なのか、診断書作成依頼文を作り、基本的には依頼者に渡して医療機関へもっていってもらいます。もっとも、依頼者の次の通院まで時間が空いてしまう場合など、診断書作成に時間がかかりそうな場合には、あらかじめ社労士側で医療機関へ直接連絡し、診断書の作成依頼をします。どのように診断書作成依頼をするかは、依頼者との話し合いで決めてもらうと良いです。身軽に動けない依頼者さんの場合は、私が依頼・受け取りまで含めてすべて行うことがあります。

※診断書の記入漏れ等について

診断書の作成を依頼し出来上がったものが送られてきたら、すぐに内容をチェックしましょう。チェックポイントとしては、主に記載漏れがないか、記入誤りがないかどうか、です。

診断書の作成はなかなか難しくややこしいところがあるので、必ずといっていいほど漏れなどがあります。漏れなどがあれば、診断書作成機関に再度修正依頼をしましょう。

私の場合、年金事務所が近くにありますので一度診断書チェックに行きます。そこでは、抜け漏れ等のチェックを職員の方にしてもらい、修正依頼を一度で完了させるように確認してもらっています。時間が許すのであれば、このような事前チェックをしてもらうとそのあとがスムーズにいきます。

④病歴・就労状況等申立書の作成

障害年金請求手続きにおいて重要な書類の一つに、「病歴・就労状況等申立書」があります。

これは、発病から現在に至るまでどのような経緯をたどったのか、通院状況・病状・日常の様子や就労状況について記述するものです。日本年金機構のホームページ内から様式をダウンロードして入力することも可能です。

障害年金請求は、基本的に書面審査です。医師の作成する診断書と、申請者が作成する病歴・就労状況等申立書の2点がどこまできっちり仕上がっているかがとても重要です。

私の場合、本人またはご家族からヒアリングした内容から大まかな流れをある程度決めた上で、集まった「受診状況等証明書」と「診断書」の内容をもとにこの病歴・就労状況等申立書を仕上げていきます。

ポイントとしては、

・受診状況等証明書と診断書との整合性をとること

・日常生活をしていく上で、障害があるがゆえにどのように日常生活に支障がでているのかを具体的に記載する

の2点が重要です。

もしも単身で暮らしていると仮定した場合、トイレ、着替え、炊事、洗濯、入浴、食事、外出、就労など(これらは病歴・就労状況等申立書の裏面に記載している項目等です)に、どのような支障があるのか、診断書内の記載との整合性をとりながら、不明な点は本人等に再度ヒアリングをしながら作成を進めていきます。

書面審査であることから、依頼者の方の現状をいかに文面で表現するのか、ここは社労士の腕にかかっているかと思います。

第4章 障害年金申請書類の提出・結果

障害年金請求の準備が進むと、いよいよ請求段階へと進みます。

一般的には、

・障害年金請求書

・受診状況等証明書

・診断書

・病歴・就労状況等申立書

・年金振込先にする通帳のコピー

・マイナンバー

の6点が揃うと申請できます。(配偶者がいる場合、状況によって戸籍謄本等も必要になりますので、あらかじめ年金事務所で確認する必要があります)

なお、病歴・就労状況等申立書については、一度原案を依頼者に見てもらい、感想をもらいましょう。依頼者の現状を的確にあらわしているかどうか、この点は障害年金の支給の可否に大きな影響がありますので、特に重要な点です。

①年金請求書の提出

年金事務所に事前予約をし、いよいよ障害年金請求書を提出に行きます。

番号札をとり、呼ばれたら相談ブースに入ります。

「受付番号5番のお客様は、3番のブースへお入り下さい」

私「社労士ケビンです。宜しくお願い致します。」

職員「いつもお世話になります。障害年金請求書の提出ですね」

私「そうです。何度か来てますので、特に問題はないかと思います」

委任状を提出し、本人確認後にいよいよ書類の受付となります。

一通り年金請求書を確認され、記入漏れがあればその場で追記。受診状況等証明書、診断書、病歴・就労状況等申立書の記載内容の整合性等を一通り確認してもらい、とくに問題なければ正式に受付となります。

職員「では、これで請求書受付となります。受付控えを出しますのでもうしばらくお待ちください」

一般的には、申請後結果が出るまで3か月ほどといわれています。

実際に、私が障害年金の請求をしてからおよそ3か月くらいたつと本人宅へ年金証書(又は年金支払通知書)が届いているので、シンプルな事案であれば大幅な遅れはないかと思います。

②結果

障害年金の請求書を提出して、およそ3か月経過後に依頼者のご家族から電話があり。

家族「障害年金請求でお世話になっている〇〇の夫です。いまお話ししてよろしいでしょうか?」

私「あっ、ご無沙汰しております。今大丈夫ですよ!」

家族「ありがとうございます。昨日、日本年金機構から書類が届きまして、おそらく年金証書だと思います」

私「年金証書が届きました?届いたということは無事に支給決定がなされたということです。よかったですね。ちなみに、年金証書の右下に〇級とか書いてあったりするんですが、なんと書いてあります?」

家族「2級とかいてあります」

私「無事に障害年金2級が出たということですね。よかったです。その下に、次回診断書提出年月とあると思いますが、いつってかいてありますか?精神の障害年金はだいたい数年ごと更新があり、その都度診断書を改めて日本年金機構へ提出する必要があります。その時にはまたお知らせいただければ、必要であればご協力致します」

家族「ありがとうございます。またその際にはご連絡いたします」

私「あと、年金証書の上の方に、受給権を取得した年月、というところがあるんですが、いつとなってますか?」

家族「令和〇年●月となってます」

私「ちょうど3年くらい前ですね。ということは、障害認定日にさかのぼっての支給が決定したということです。認定日請求がみとめられたんですね」

家族「そうなんですね、それは大変ありがたいです」

私「本当によかったです。今後の入金予定ですが、まずは障害認定日の翌月分から直近の月分までが一括で支払われ、その後は、2か月に1回の支給になります。年金の支払いは、基本的に前2か月分を偶数月の15日に支払いとなるのです」

家族「わかりました」

私「今回は無事に年金が支給されてとても安心しました。ご協力いただきありがとうございます。また何かわからないことがあればお気軽にお問い合わせくださいね」

家族「迅速に対応していただき、支給決定までたどり着き本当に感謝しています。今後もよろしくお願いします。それでは失礼致します」

第5章 まとめ

いかがでしたか?

障害年金請求実務のシンプルな事例ではありますが、少しでもイメージを掴んでいただきたいと思います。

私はこの障害年金請求手続きをメイン業務にはしておりませんが、過去、年金事務所での年金相談業務を社労士として行っていた経験から、縁ある方の年金請求手続きだけは行っております。積極的には受注しておりませんが、依頼があれば最善を尽くして取り組んでいます。

障害年金請求手続きが自分の肌に合うと思う方は、これをメイン業務にしても良いかもしれません。いずれにしても、年金請求業務は奥が深いので、知識の研鑽は常に行う必要があります。知識の研鑽という意味では、年金事務所での相談業務がお勧めです。

日本年金機構と各都道府県の社労士会は年金相談業務の委託契約をしていますので、うまく相談員のメンバーに入ることができれば年金相談スキル向上の場としてはこの上ない最適な場所です。もちろん、窓口に立つプレッシャーは計り知れないのですが汗

社労士の中でも「年金は苦手」という方が結構いますので、ほかの社労士さんと差別化するために、年金相談の実力を時間がある内に挙げておくと後々役立ちます。私自身も、特に自分から手をあげるわけではないのですが、各関係機関から「年金がわかる社労士さんといったら〇〇さんとお聞きしたので」という問い合わせをもらい、色々なところの相談員の依頼を受けることが多いです。これも、開業当初、時間がある内に年金相談員の実力を伸ばすことに注力できた結果だと思いますので、まだ開業後方向性を決めていない方にはお勧めです。

どの方向に進むにしても、開業後は日々研鑽です。

がんばっていきましょう!!