社労士が自宅事務所で開業する場合のメリット・デメリットは?

社労士として独立開業するときに、どこを事務所にしてスタートするか?

選択肢としては大きく分けて2つあり、ひとつは自宅を事務所にして開業登録する方法。もう一つは、どこかの物件を賃貸してそこを社労士事務所として開業登録する方法です。

多くの人が自宅を社労士事務所とするようです。

私も当初、自宅を社労士事務所として開業登録して仕事をはじめました。

中には、自己資金を準備したり金融機関で開業資金を調達し、スタート時から賃貸事務所で開業する方もいらっしゃいますが、資金的に余裕はなく私はとても真似できませんでした。

自宅社労士事務所でスタートした思い出。メリットは?

正直私は、はじめから自宅事務所一択でした。

というよりも、どこかに事務所を借りて社労士をスタートするという考えは少しも頭にありませんでした。

・お金がない

・お客もいないし、仕事もない

ないないづくしだったので、事務所を賃貸してまでスタートする意味が全く分かりませんでした。

社会保険労務士は、自分の身体一つとその他備品があれば十分です。

事務所にお客さんに来てもらうというより、自分がお客さんのところに行くことがメインですので、自宅事務所で事足りてしまうのです。

「フットワークが軽いことが売りなので、すぐにお客さんのところへ飛んでいけますよ!!」

このようにお客さんに話し、積極的に外に出るようにしました。

お客さんも、「来てもらえるなら助かる」と言ってくれますので、両者WINWINな関係になります。

社労士が自宅開業をするメリットは、次の3つではないでしょうか?

①家賃がかからない

 経費が余分に発生しないのが何より良いです。

 開業当初は仕事がありませんので、収入もありません。自分の貯金などをコツコツ取り崩して生活していきますので、できるだけ出費を抑えることが鉄板です。

 家賃はいわゆる固定費として毎月支払いをしなければならないので、結構家計に響きます。

 社労士として独立開業し事業を続けていくためには、資金ショートしないことが何より大事です。

潤沢な資金があるのであれば別ですが、そうではない開業当初はできるだけお金を大切に使いましょう。

②時間が節約できる

 自宅兼事務所なので、単純に自宅と事務所の通勤がありません。

 通勤時間0分!!

こんな良いことはありません。

雨の日も風の日も大雪の日も通勤がいらないので快適です。

できた時間を何に使うかは自分次第です。

勉強する、仕事をする、営業をする、家族とより多い時間共にする、など。

「時は金なり」です。

③いつでも仕事ができる

自宅が仕事場だと、いつでも仕事をすることができます。

自宅兼事務所で社労士独立開業をするということは、基本的に一人事務所であることが多いです。

そうすると、1から10まですべて自分でやらなければなりません。

営業、仕事、自分の事務所の経理、請求書作り、郵便、などなど。

そのうちに時間が全く足りなくなってきます。体がひとつでは足りなくなり、自分がもう一人いればいいなぁなんて思い出します。

そんな時、できる限り仕事のための時間を捻出する必要が出てくるのですが、自宅兼事務所であれば、起きてすぐ仕事ができるし、寝る直前まで仕事ができます。

仕事をし過ぎるという問題がでますが(-_-;)、一気に駆け上がり仕事を軌道に乗せる際にはこの仕事漬けの環境がプラスにはたらくのです。

次第に感じる自宅事務所のデメリット

自宅事務所で6年ほど社労士をやっていると、時折自宅事務所のデメリットも感じてきました。

大きく分けて5つほどあります。

①仕事場が狭い

 私は自宅の中の一室を社労士の業務スペースにしていましたが(8畳ほどの広さ)、次第に業務量・顧問先が増えてきて、手狭になっていきます。

・書類を整理して片付けても片付けても散らかったまま。

・保存書類を格納する本棚等の空きがなくなる。

・書類作成を軽やかにしたいけど机の上は積み上げた書類やファイルで埋もれている。

・必要な書類が瞬時に探し出せなくなる

など。

仕事場は自分の戦場です。いかに快適に働けるのか、いかに自分のパフォーマンスを高めて仕事ができるのか。いろいろ考えると、狭い職場は自分に対してマイナスの影響を与えます。

②仕事とプライベートの区切りが出来づらい

自宅事務所だといつでも仕事ができてしまうので、自分のプライベートとの区別があいまいになります。

また、私の場合小さな子供がいましたので、「パパ遊んで~」と仕事場に入ってきてよく仕事が中断することがありました。家族と触れ合えるので良い時間なのですが、時には仕事に集中し納期までに間に合わせなければならない時がありますので、そういう時は「自宅の外に事務所があればなぁ」なんて思います。

③たまにある来客で慌ただしくなる

基本的に自分がお客さんの会社に行くことが多いのですが、たまーに来客もあります。

そんな時、自宅事務所は一気に慌ただしくなります。

自分「午後の〇〇時にお客さんが来ることになった」

妻「えー!!玄関汚いから掃除しなきゃ。廊下も散らかっているから急いで片付けなきゃ」

普段お客さんが来ないからと油断しているので、突如来客があるとなるとお祭り騒ぎです。

「いつでもお客さんを迎えられる事務所があるといいよなぁ」

とよく思いました。

あと、来客中に別の部屋で小さい子供がぎゃんぎゃん泣いていると、接客に身が入りません。

「す、すみませんねぇ(-_-;)まだ小さいもので・・・」

お客さんを静かに迎えられる応接室があるといいなぁとよく思いました。

④人を雇用できない

自分一人で仕事をしていると、次第にキャパオーバーとなり、人手が欲しくなる時があります。

しかし、自宅事務所だと第三者を自宅に入れることになるので、それがなかなかできません。

最後まで一匹狼で社労士事務所をやるというのであればいいのですが、「人を雇用して、正社員2~3人くらいの規模にまで拡大したい」などと事務所を拡大路線に乗せる場合には、自宅事務所の限界がいつかはきます。

事務所のスタイルにもよりますが、少なくとも人の雇用を考える場合には自宅事務所は都合が悪いといえます。

⑤コロナ渦において第三者を自宅に入れることについて家族が抵抗を感じる

ここ数年の変化でより顕在化したと思いますが、コロナウイルス感染拡大が常態化してくると、家族が第三者を自宅に招くことに抵抗を感じてきます。

昔はそんなことはなかったのですが、今の時代はガラッと変わりました。

お客さんの方も、生活感あふれる他人の自宅に訪問することを気にされる方もいるかもしれません。

以前にもまして、自宅事務所には来客を呼びにくくなったことは間違いありません。

自宅事務所を脱出し、事務所を別に構えることにした

6年ほど自宅事務所でやってきましたが、ここ1~2年の間で私は自宅事務所を脱出して、外に事務所を構えることにしました。

その理由は上記のデメリットを解消するするためです。そのほか、

・さらに顧客拡大をするため

・意外と社労士事務所内で秘密裏の相談をしたい経営者が多いことに気づいたため

・いつでも人を雇用できる状態でいたい

・やはり事務所を構えると相手が受け取る印象がちがう

・仕事のパフォーマンスをあげる環境を整えたかった

・仕事が忙しくなりお客さんのところへ訪問する時間の捻出が難しくなったため、逆に来てもらえる時は来訪してもらい時間を節約するため

などが理由です。

当初はどこかテナントを探し賃貸事務所の予定でしたが、様々なタイミングが重なり、結果として自分の事務所を建てることにしました(あまり大きくないですが)。

事務所を外で構えることで、なぜか不思議とお客さんが増えました。おそらく、自分の基地を固めることで前よりも腹が決まり、自信をもって仕事ができるようになったからだと思います。

今の自分の年齢からすると、健康であればあと25年はこの社労士の仕事をする予定です。

健康に気を付けて、さらに頑張ります。