事務指定講習まで時間がかかる?!社労士業務未経験者の独立開業時の注意点。

社労士試験の合格発表は毎年11月。

努力が実り、社労士試験合格!!となったとしても、すぐには社労士として仕事をすることができません。

それは、試験合格後に社労士として開業登録するには、

「2年以上の労働社会保険諸法令に関する実務経験があること」

または、

「労働社会保険諸法令関係事務指定講習を履修し修了すること」

のどちらかの要件を満たす必要があるからです。

社労士事務所等での勤務経験が2年以上ある場合には、2年以上の実務経験を証明してもらうことで社労士の開業登録ができます。今現在の勤務先に上記の証明をもらえる人や過去の勤務先に証明をもらうことができる人は特に問題はないと思います。

他方、社労士業務に関して2年以上実務経験がない人や、実務経験があってもいろいろな事情で上記の証明がもらえない人は、事務指定講習を受講し修了しないと社労士登録できないので、受講は必要不可欠です。(ちなみに私は2年以上の実務経験がなかったのでこちらでした)

今回のブログは、「社労士の事務指定講習について」の話をします。興味がある方は最後まで読んでみてください!

社労士登録のための「事務指定講習」の思い出

社労士登録するために、私は事務指定講習を受けました。

受けたのは今から約10年くらい前なので、今や記憶がおぼろげにしか残っておりません汗

過去の記憶を掘り起こし、あと、当時の手帳を見返して、当時を振り返ってみました。

事務指定講習の流れは、大きくわけて①約4か月間かけてすすめる通信指導と②4日間の面接指導(または今はEラーニング講習)の2段階です。

詳細は「事務指定講習 全国社会保険労務士会連合会」でググってもらうと要項がでてきますので一度見てみてください。

(1)通信指導

毎年2月~6月くらいまでの間に、送られてきた教材を参考にして申請・届出様式を実際に仕上げてそれを期限内に提出し添削を受けるというものです。

社労士業務の経験値があまりなかった私にとっては、実際にありうる事例に関して書類を仕上げるという作業はとても勉強になりました。前職の税理士事務所でも簡単な社労士業務をやっておりましたが、メインは会計業務でしたので、一から業務を習うということはできていません。通信指導で基礎的な手続きを学べたことは、次のステップに行くためにはありがたいと思います。

ただ、これをやれば実務レベル2年くらいになるかと言われればなかなか難しいですが、少なくとも「こういう場合にはこのような申請・届出をする」という実務の大枠を経験できるのはとても貴重です。

物事なんでもそうですが、「大枠をとらえ、そのあとに詳細を詰めていく」というのは知識・経験を習得していく際の王道であると私は思っています。

社労士試験の勉強もそうではありませんでしたか?まずは科目の全体像をつかんだうえで、その後、基本書の読み込みや問題演習などを通じて知識を深めていく。この社労士の事務指定講習も社労士業務の全体像をつかむためのものです。実際に知識を深め実務能力を高めていくのは開業登録後にやることなのです。

(2)4日間の面接指導(今はEラーニング受講)

通信指導が終わると、次に面接指導というものが待っています。

私の頃は、通信指導が終わったのち、7月ころに東京のTOC有明コンベンションホールで4日間の面接指導を受けました。

面接といっても、1対1の面接をするわけではなく、社労士の実務講師が前に立ってその講義を聞くというものです。地方出身の私は車で東京へ行き、会場近くのホテルに4~5泊ほどしてこの面接指導を受けました。当時の私はわりと時間があってので連泊し面接指導を最後まで受けることができましたが、時間を割けない方にとってはこの面接指導を受けるためのタイムマネジメントが一つのデメリットになります(今はEラーニングでよいそうですが…)。

面接指導は、1番前の席で受けた記憶があります。久々の授業(講義)で、講師の方の話が新鮮でとても勉強になりました。

当時の手帳を見返すと、どうやらお昼はコンビニ弁当やおにぎりを買って(ひとり寂しく笑)食べていたようです。夜ご飯は、「とんかつ」「天丼」「すき屋」と書かれていて、一人店に行ってご飯を食べた記憶がうっすら残っています。

終わってみればこの4日間の面接指導はあっという間で、最終日にその場で修了証をもらうことができました。

(面接指導終了後、東京で所用を済ませ、自宅に車で戻りました。地方なので帰宅は深夜だったようです)

社労士試験合格後、開業登録まで意外と時間がかかる

私は、事務指定講習を受けた後に修了証をもらい、ようやく開業登録をすることができました。

考えてみると、11月に社労士試験合格発表があり、その後事務指定講習が2月~7月くらいまでかかり、ようやく開業登録できたのはその年の9月なので、なんやかんや社労士合格から9か月前後は開業登録できない期間が発生することになります。

この期間、長くないですか?

社労士業務未経験者が、社労士試験合格後、事務指定講習を受けて開業登録できるまでの間の9か月間、(仕事をしていない人は)全くの無収入でいることができるのか、ここはひとつの問題だと思います。

お勤め中の方や、無職でも資金的に余裕がある人や、夫・妻・家族の援助がある人であれば、その間開業準備に向けて着々と進めばいいと思いますが、そうではない人は、この間何らかの仕事等をして収入も臨時的に得ていかなければならないのです。(単発バイトなど)

当時無職であった私の場合、社労士試験合格後、先に行政書士登録をし、小さな仕事で小銭を稼ぎ、さらには知り合いの家庭教師などをやって当面の資金を稼ぎました。あとは、妻も少し働いていたので、貯金と合わせてなんとかその期間乗り切ることができました。(自分も妻も近くに実家があったので、よく夕飯を一緒に食べさせてもらいました(-_-;)家族のありがたみをしみじみ感じます涙)

あらためて考えると、事務指定講習を受けてその年に独立開業を目指す人は、在職中の方であればぎりぎり事務指定講習の前まで仕事を辞めない方向でいるのが一番良い気がします。

他方、無職の方であれば、やはり独立開業までの間をつなぐ生活費のことを考えなければなりません(もちろん、開業登録すればすぐに稼げるわけではありませんが…)。この点は人それぞれ置かれた状況が違うので何ともいえませんが、開業登録する前の段階でひとつの試練があると思っておくとよいでしょう。

社労士開業登録するまでの生活をどうするのか、私ははじめあまりまじめに考えていませんでした。今考えるととても恐ろしいことです汗。ただ、当時の自分は独立開業という目標に向かって、前へ前へとひたすら進んでいたのでその恐怖にも当時は気づかなかったのだと思います。結果的には、それが良かったのかもしれません。独立開業に向けて進む⇒生活費が足りないのであれば何らかの方法でお金を稼げばよい⇒独立開業に向けてさらに準備をすすめる⇒お金がさらに足りなければバイトをするなり家庭教師をするなりして稼げばよい⇒がむしゃらに進んでいるうちにあっという間に開業登録へ。このようなサイクルで私は進んでいきました。

事務指定講習はできるだけ早めに受けよう!

社労士業務未経験者の方又は2年以上の実務経験の証明が取れない方で、いずれ社労士で独立開業をしたいと考えているのであれば、社労士試験合格後すぐに事務指定講習に申し込み、次の年の2月~7月頃までの指定講習をすぐに完了させましょう。

指定講習を修了さえすれば、すぐにでも社労士開業登録ができます。

「いや、独立開業はまだ数年先だから、もう少しあとでもいいや」

「あと1年くらい今の社労士事務所で実務を積めば証明がもらえるから、事務指定はいいや」

そのように考える方も多いと思いますが、私はすぐに受けることをお勧めします。

人生、タイミングが重要です。いつ、どこで、なにが起こるかはわかりません。

★ケース1

「ねえ、〇〇くん、一緒に社労士事務所やらない?私はもう歳で次の後継者を探しているんだよね。すぐに開業登録できる?えっ、2年以上の実務経験ないのか・・・。事務指定は?受けてないのか…。事務指定受けて修了できるのは、来年の8月か9月くらいとすると、うーん、それまでは待てないから他の人をあたってみるよ。また縁があったら声をかけるよ。」

実際にありうる事案ですが、せっかくのチャンスを取りこぼしてしまいます。開業から土台を譲り受けられるチャンスを手にできないのです。(重鎮が未経験者に声をかけることなんてない!といった声も聞こえてきそうですが、そんなことはありません。重鎮であるがゆえに新人未経験者に声をかける、というカラクリが実はあります。詳細は企業秘密です。あしからず)

★ケース2

実務経験がもう少しで2年以上になるというところで、就労先の社労士事務所を退職することになってしまった、体調不良により退職してしまった、といった事情で、2年以上の実務証明がもらえなくなってしまう。

また、就労先の社労士事務所の所長と相性が悪く、退職後、実務証明をもらうための連絡がこわくてできない。2年間務めた社労士事務所に証明をお願いしたところ、「はじめの3か月は見習いでほとんど社労士実務やっていないから、証明は1年9か月だけ。それでいいなら証明する」といわれた。

2年以上実務経験があることと、それを証明してもらえるかどうかはじつは別問題です。なかなか辞めた古巣に電話をして証明をもらうのは気が引けますよね汗 (見方を変えるとライバルです)

あとは、「2年以上の実務経験の証明をしてやった」などと、同じ業界で働く間ずっと恩に着せられるおそれもありますね。

上記のような気がかりがある場合には、時間とお金がかかるけど事務指定講習をうけて、なんの気兼ねもない状態で社労士の開業登録をしましょう!

よく、「明日できることは今日やらない」という言葉をききます。確かに、明日できることは無理して今日やる必要はなく、今日という貴重な時間を有意義に過ごした方がいい、というのはよくわかります。私もこの考えは一理あると思うので、明日できることはなるべく今日やらないようにしていた時期がありました。ただ、ここ1、2年の私の場合、「明日できる」と判断した仕事の数が多すぎて、むしろ自分を苦しめる結果となってしまいました。仕事を明日やればいいや、とどんどん後回しにしたときに限って、緊急案件や新規の案件が重なって発生し、後回しにした仕事になかなか手が付けられず、結果、仕事の締め切り地獄に苦しめられるというものです。「明日でもできるかもしれないけど、いつ新規の案件や緊急案件が入るかわからないから、その時に備え、時間のある今日仕事を片付けちゃおう」。最近は、できる時に仕事をちゃっちゃと終わらせて、なるべく次の日に持ち越さないように気を付けています。その結果、時間と心に余裕ができ、新規案件や緊急案件にも十分に対応できるようになってきました(まだまだ十分ではありませんが)。事務指定講習も同じです。いつでも受けられるのであれば、すぐに受けましょう。あとでいいや、という判断は、後の自分を苦しめることにもなりうるからです(チャンスを取り損ねたり、「事務指定講習を受ける」というタスクが講習を受けるまでずっと残ってしまい自分の活動・計画の邪魔になることがあります)。早めにケリをつけましょう。